〇月30日(火)入院12日目
今日は周囲の入院患者さんのことを、つらつら綴っていこうと思う。
もくじ
ある患者さん
老年期認知症? 鬱? …という感じの方。
ひとりごとが多い。
「家族がこない」
「死ぬしかない」
「老いぼれて…」
そんなセリフをぼそぼそと小声で、力なく呟かれるのである。不幸そうに。
そんな方がある日、ひとりごとでなく寝言を発しておられた。
普段のぼんやり、もやっとした話し方でなく、かくしゃくとした…というより若い話し方だった。
「冷蔵庫にしまってくれたかしら」
「そうねぇ、もう出ないものね」
「ほんの少しだったからね、もうテーブルいっぱいだものね」
夕食のおかずの一品を出し忘れ、それを冷蔵庫にしまったかしらと、おそらくお嫁さんに尋ねられている様子。
それがまるで、師長さんかCAさんかってぐらい、はきはきとした明るく若い声だ。
思わず聞き入ってしまうくらい、低めでよく通る、品のある声。
きっと…幸不幸とは本人の中の理想落差であって、他人と比較するものではないのだろうな、と思う。
この方には、おそらく今の時点でも良きご家族がいらっしゃるのだろうと。
老いの恐ろしさを改めて知った気がする。
そして私は一晩寝られなかったのである。
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